オリオンの空は燃えている

昭和が生んだ怪物はむらケンジのほのぼの日常系ブログ

裸のいじめっ子

この物語はフィクションであり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。

約半年に渡った研修も終わりを告げました。

研修終了の最後の日、茶話会がしめやかに行われました。最後の代表の挨拶をするのはあの男、そうこの研修を牛耳ってきたあの"いじめっ子"です。

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私は約半年間、この"モンスター"に悩まされ続けました。私がされたわけではありませんが、この男は同じ仲間を「この障害者、さっさと行け」と蹴り飛ばすような人間です。他にも突然、歩き方が気に入らないと言って、他人を怒鳴り散らす癇癪持ちでもあります。

傍から見ていて本当に気分が悪かった。そして、止めれなかった自分が無力を感じていました…。

いじめっ子が挨拶をするその前に、研修生の中でも比較的このいじめっ子と仲が良く、かつ常識的だった人(仮に加藤さん)が口を開きました。この研修を引っ張ってきたのは、いじめっ子だと。もちろん、同意できないこともあったけども、いじめっ子にみんな感謝しようと…。いじめっ子は誇らしげな顔をしています。

いじめっ子を立てようとする発言に私は一瞬耳を疑いましたが、このいじめっ子が研修のために身を削って我々のために嫌な仕事をしてきたのも事実です(後々に成績のためだと判明しましたが)。しかし、加藤さんがこのいじめっ子を盛り立てよう、盛り立てようとすればするほど、研修生の中に白けた雰囲気が広がっていきます。

加藤さんの必死のお膳立てにもかかわらず、まったくと言っていいほど、お涙頂戴の雰囲気にならず、焦り始めたいじめっ子がついに口を開きます。

「俺が嫌われ役でいいんだ…」まったく涙が出てないで泣きじゃくるその姿は、まるで免罪符を得ようと必死にもがき弁明する哀れな男そのものでした。断言できますが、この男は嫌われ役を買ってでたのではなく、明らかに自分の不平、不満、ストレスを利己的に、自己中心的に弱者にぶつけていただけです。

この男がやってきた行為は法的に訴えられるべきであり、このまま野放しにすると、間違いなく将来、部下を殺すことになる、そんな危険な人物なのです。

しかし、最後にそれはただの役だった、自分は無実だったと、いじめっ子は必死に訴えようとしています。いや訴えられるのはあんたや!と私は突っ込みそうになりました。滑稽なのは、挨拶の途中で先生にあたる方が、「もう時間ですね、終わりましょう」と強引に挨拶を終わらせに走ったこと。

先生も、このいじめっ子をアイコンとして、研修を一定の方向へコントロールしていましたが、さすがにこの茶番には呆れてしまったのでしょうか。この粗末な扱いに、いじめっ子を一層みすぼらしいように感じました。

そのいじめっ子が後に「決めきらなかったわ」とつぶやいたようにまったく盛り上がらず、誰の心もつかめず、同意も得られず、この裸のいじめっ子への賞賛、賛辞、感謝、感激にあふれるはずだったストーリーはその結末を迎えることなく、あっけなく終わってしまいました。

そして翌日の最終日、全国に散っていく研修生同士、握手して称え合う中、いじめっ子の周りには数人の取り巻きがいるだけで、ほとんどの人はこのいじめっ子と目も合わせません。

このいじめっ子が権力を持っていたのは事実です。みんな表向きには素直にこのいじめっ子に従っていました。しかし、それは歯向かったら何されるかわからないからであって、この研修が終わりに近づくにつれて、研修そのものの影響力が小さくなっていき、「うるせーんだよ、あのデブ」などと、みんなのリミッターが外れていくのがわかりました。

結局、最後の最後はやはり人間性が物を言うのでしょうか。

思い起こせば、この男は本当に病的な男で、いわゆるサディストなんでしょうか、この数週間前の卒業旅行で行ったホテルで、私が泊まるグループ(私以外はこのいじめっ子の取り巻き)の部屋にやってきて、私の布団にもぐりこんでくるのです。そしてベッドで寝る私の足を枕代わりにしてお酒を飲むのです。

おそらく私を取り込み、征服したかったのでしょう。

都合のいいときだけ「飲も~よ~」などと甘えた声で言ってきます。本当に、本当に吐き気がしました。私はこの時点でこの男に完全に心を閉ざしていたので、まったく相手にしてませんでした。適当にあしらってイヤホンをして寝たふりをすると、「こいつ面白くねえな」などと平気でとりまきと言い合いしています。

最後の数週間、本当に、本当にこの男と離れたくて仕方がなかったです。そして、その念願が叶い、このモンスターとの最後の日を迎えることができて本当によかった。本当によかった…。

最後、去っていくいじめっ子の寂しい背中を見て、ある研修生が言いました。「いじめっ子、何かかわいそうですね」私も完全に同意でした。彼は自分の欲求を満たしてくれる大衆を得ることに幼稚な精神、自分の器や人望の無さから失敗しました。

研修という彼の城が崩壊していく中、私欲の限りを尽すために、それを繋ぎとめようと必死に自分の居場所を作ろうとしたいじめっ子ですが(おそらく彼にとって居心地の良い人間関係を卒業後も継続したかったのでしょう)、圧倒的世論の前にはその行為もまったくの無力でした。

さぁ、長かった研修もこれで終わりです。