オリオンの空は燃えている

昭和が生んだ怪物はむらケンジのほのぼの日常系ブログ

激震包囲背信放棄

「6年間お世話になりました!」

私の職場に、長年いた先輩、本木さん(仮名)が春の定期異動で、新天地(違う部署)に旅立ってしまった。最後の挨拶で本木さんは「これまで自分のやりたいように仕事をさせていただいた上司には感謝してもし切れない。これからもがんばります。」という力強い言葉を遺して旅立っていったのだった。大役をやり遂げた先輩の背中は、とても頼もしく見えた。

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が、その僅か3日後に事態は急変する。

本木さんの代わりに仕事を引き継いだ私の後輩が突然叫びだす。後輩自身の机の前で、三度叫んだ。三度も…!「ええぇ!?」「ええぇっっ・・!?」「えぇ・・・っ!」後輩の最後の叫びは、そんな馬鹿なという動転する気を押し殺したような叫び声だった…。

業務を引き継いだ後輩の書類確認により、本木さんの、実に6年に渡る杜撰な業務が明らかになったのである。

もちろん、ここで詳しくはかけないが、ニュアンスだけ伝えさせていただく。あくまでもニュアンスであって、事実とはまったくリンクしていないので、ご了承いただきたい。例えるなら、そう、本木さんは、食材を給仕する仕事をしていて、6年にも渡って賞味期限切れ(消費期限切れではない)の食材を料理人に調理させおり、従業員はその出来上がった料理をお客さまに提供していたのだ。

明らかな会社の規則違反だった。

度重なる検査や監査にもクローズアップされず、6年間、この偉業を本木さんはやってのけたのである。はっきり言って狂気の沙汰である。このお粗末な犯罪を犯して(見つけられなかった方も見つけられなかった方だが)、このまま異動で逃げ切れるとでも思ってたのだろうか。

本木さん本人は「(処置を)忘れていた」の一点張りだが、随所に故意的に書類を改ざんした後が散見される…。残念ながら本木さんの公的な処分は免れないだろう。もしかしたら料理を提供した料理人、従業員、それを監督していた上司にも処分が及ぶかもしれない。

私も、例えるなら、1回か2回だけ、料理を運ぶ手伝いをしたことがあるので、私も何らかの処分を受ける必要があるかもしれない。が、そんなことはもはやどうでもよい。

本木さんは、私が若いころ(今は出世して本木さんは下の立場である)には、私が会社の調味料を使うのが面倒くさくて、amazonで買ってきた調味料使って調理してみようとしたときには、鬼のような形相で私を罵倒し、大勢の人がいる前で辱め、正しい仕事のやり方を教えてくれた。ありがとう。

そして単純にこれと比較するなら、本木さんがやった行為は、極刑、即射殺ものの大失態である。しかし、当の本人はニコニコ様子がおかしい…。今の職場から呼び出されて、前の職場で事情聴取を受けている本木さんが、事情聴取の合間に私を見つける…。そして、私に話しかけてきた!

「はむらくん、スティッククリーナーいる?」

文字に興すと、何を言ってるんだという感じだが、私は見た。顔は紅潮し、虚ろなその瞳を。本木さんは精一杯、精一杯の強がりで私に掃除機を託そうとしたのである。私の中では漫画『カイジ』の鉄骨渡り編の、カイジにチケットを託そうとする石田と完全に一致した。

哀れすぎる…。

定年まであと数年というのに、あと数年逃げ切れるとでも思っていたのか…。そして、界隈が大事になっているのを知っているのか知らないのかわかりませんが、「掃除機持っているので、要りません」とゴミクズを見るような目で私が本木さんを見ていたことに本木さんは気づいていたのか。

「人の振りみて我が振り直せ」という諺があるが、私にも無意識に自分の都合の悪い事実から目を背け、犯罪まがいのことを犯していたりするんだろうか。こうやって公然と本木さんを批判する私も、数日後に脱税で捕まったり、女子高生と援助交際して捕まったり、するかもしれない(しないが)。

人っていうのは本当にわからない。わからないのである。

「自分のやりたいように仕事をさせていただいた上司には感謝してもし切れない」

本木さんの後始末のため、毎日0時近くまで残業をしている後輩を尻目に帰宅してキーボードを叩いているときに本木さんの異動の挨拶の言葉が、ふと思い出された。